愛を知る小鳥
9 あなたのそばで


園田 雄生 26歳
K大学理工学部を卒業後、現在のMOカンパニーに入社
主に商品開発部に従事


バサッ。
特別変わったところのない経歴の書かれた書類を机に放り投げた。
あれから美羽は前日の疲れも残っているのか微熱があることが判明し、そのまま休ませることにした。これ以上お世話になるわけにはいかないと頑なに断ろうとしていたが、怪我も熱も早く治さなければここから出ることは許さないと強く説得し、最終的に素直に受け入れた。先程寝室を覗いてみたが、静かに眠っているようだった。


園田…。
あの男は確か会議の時に向かい側に座っていたはずだ。特段目立つような容姿だった記憶はない。だがあの場に出てこられるということは仕事に関してはそれなりにできる人物だということになる。
美羽からはあれ以上何も聞かなかったが、状況から考えて学生時代に接点があったのだろう。彼女はあのアパ-トには高校卒業後から住んでいると言っていた。そして先程の話からはあの男がそれを知っていた様子ではなかった。ならば少なくとも高校卒業後は一度も会っていないはずで、会社で偶然再会し、仕事帰りの彼女を尾行して突き止めたに違いない。

…ギリッと握りしめた拳が怒りで震える。

あの男はまた必ず動くだろう。それまではこちらから手をだすことはできない。
いずれにしても彼女をあの家に帰すのは危険すぎる。


潤は一つの決意を固めていた。
< 118 / 328 >

この作品をシェア

pagetop