私は彼に愛されているらしい
いるらしい
えっ、触れた!?

「ま、頑張って下さい?」

竹内くんの温もりが感じられる。距離もすごく近く感じられる。

っていうか恥ずかしい!

「…何ですか。」

竹内くんの顔を見たまま固まっている私に怪訝な表情を浮かべる。我に返った私は思わず視線を彷徨わせながら、でも何も言えなくて黙ってしまった。

視線の落ち着いた先は自分の手元、それでも竹内くんの手元と行ったり来たりしながら少し落ち着きがない。

ヤバイ、どうしよう。物凄く意識してきた。凄い今さらだ。

「おー。えー?これか。」

すると一人で感動し納得する声が聞こえてきて私の緊張も少し和らぐ。

これって何だ。

「やっと俺のこと意識しましたね?」

「いっ!?」

思いっきり図星だと言わんばかりに肩が揺れた。

「手を繋いでも腰に手を当てても動じない人がやっと揺れた。」

楽しそうに話す竹内くんの顔を恐る恐る見てみると、声色の通りに彼は笑っていた。しかも意地悪そうに、満足そうにだ。

手を繋ぐ?腰に手を当てる?

言われている意味が分からず疑問符を浮かべていたがそれはすぐに解消される。

手を繋がれたのは構内を出て駐車場までの距離に、確か竹内くんの歩く速度に追いつけなくて躓きそうになった後だ。

腰に手を当てられたのはファミレスに入る前、車が傍を横切った時に腰に手を当てられて竹内くんの方に寄せられた。

2つとも親切な人だなとしか感じなかった気がする。

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