恋ごころトルク
2 グリップ

2 グリップ

ちゃんと、定めて。

見失わないように。



 ***

 入校してから1週間後の、お休みの日。あたしは朝から緊張していて、身支度に時間がかかっていた。

「きなこ、行ってくるよ。初教習だよ。バイクに乗るの」

 ヘルメットは、自転車の籠に一応入るけど、当たって傷が付きそうだから、リュックに入れた。あとグローブ。パンツスタイルで足下はスニーカー。ネットで調べたけど、靴ひもが絡まったりするから仕舞って乗った方が良いらしい。危ないよね。

「じゃあね。おりこうさんにしててね」

 ピヨッという良いお返事。今日は少し曇っているけど、天気予報では降水確率が低かった。外に出ると、少し肌寒い気がする。パーカーで正解。

 前回と同じように、自転車を漕いで自動車学校へ。今日は第1時間目。初教習だ。予約時間は10時から1時間。

 光太郎さんから貰ったヘルメット、そして新しいグローブ。新しい匂いに囲まれて、自動車学校。まさに新入生の気持ちだよ。

 スニーカーの靴紐が垂れないように、ぐるぐると足首に巻いく。肘と膝、上半身に、自動車学校にあるプロテクターを、パーカーの上から装着する。新しいものじゃないし、不特定多数の人が使っているから、なんか他人の臭いがするんだよなぁ。ちょっと破けたりしてるし。これは仕方がないけど……ちょっと苦手。でもこれ着けないと危ないからね。年季が入っていて、ゴムのところが伸び伸びになっているけれど。そして番号のゼッケンも着ける。ええと、末広がりの8番にしよう。

 緊張するなぁ……ドキドキしながら時間を待った。



「はい、じゃあ……木下さん~」

「は、はい」

 開始のチャイムが鳴ると、奥からヘルメットを被った先生が数名出てきて、生徒の名前を呼ぶ。あたしは早々呼ばれたので、先生のところへ行った。先生は全員、男性。

「今日からですね。よろしくお願いします。がんばってね」

「はい、よろしくお願いします」

「はい、じゃあ5号車で行きましょう」

 バイクの鍵を渡される。アパートの鍵、車の鍵とあまり変わらない感じ。自転車の鍵とはちょっと違うかな。


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