お金より体力が大事?
新しい本のタイトルは?
幸鷹の姉の多佳子と子どもたちは、予定どおり1週間の休日の前半を街で友人と会ったり、買い物をしたりして後半になり、多佳子の疲労がたまる頃に小花の別荘にたどり着いた。


「いらっしゃいませ。お疲れのところようこそおいでくださいました。」


「あ、私たちに余計な気遣いはしないでくださいね。
私も年のせいか、子どもパワーにはずっとついていけなくて、弟に子守りを頼んでしまったのに、こんな素敵な別荘にまで押しかけちゃって、正直なところ恐縮しています。

だけど・・・小花さんが私の思っていたような人でよかったわ。」


「えっ?」


「だって大ベストセラー作家さんって感じがしない人でね。
失礼だったら申し訳ないですけど、かなりお若い方ですよね。」


「はい、私はまだ大学生ですから。」



「えっ!そ、そうだったの?
若く見える人かと思ってたけれど、そんなに・・・それで別荘ってすごいわ。」



「それは作品が当たってくれたから忙しくて、必死でこなしたら入ってくるものが入ってきたっていう偶然みたいなものです。

私はもう親もいませんし、姉も遠くで家庭があるし、結婚するときに険悪な関係になってしまって、私はひとりぼっちな生活していますから。」


「あのう・・・険悪になってしまった理由をきいてもいいかしら。」


「あ、それはまぁ、あとにしましょう。
ぼっちゃんたちがお腹をすかせておられるでしょう?」



「あら、そうねぇ。あとで幸鷹に子守りしてもらってる間にお話しましょう。」



子どもたちも幸鷹も食事をすませると、そのままみんなでお風呂に直行していった。


お風呂がすめば、子どもたちには眠気がきたようで、幸鷹は子どもたちの部屋で本を読んでいた。


コンコン!


「はい。」


「お風呂すごくよかったわ。いい香り、ありがとう。」


「いえ、香りは個人の趣味があるからどうかと思ったんですが、よろこんでもらえてよかったです。」


「さっきの険悪になってしまったお話の続きをきかせてもらってもいいかしら。」


「あ、お恥ずかしい話です。
姉は自分が結婚して幸せになるのに私まで夫の家に連れていこうとしたけれど、私はそれを拒絶したっていう理由です。」


「女のひとり暮らしは危ないと思ったのね。」


「ええ、でも、姉の夫やその人の家庭まで、私に気を遣ってもらうのは嫌だったんです。
私に何も稼ぐ能力もなかったら、すがったかもしれませんけど・・・私は・・・」


「とてもよく稼ぐ作家さんですものね~。
それだけが理由ではなかったんでしょう?」



「あっ・・・多佳子さんって何でも見抜いちゃうんですか?」


「そうね、幸鷹の気持ちまでスケスケに見えちゃうわ。ふふふ」
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