極彩色のクオーレ
蜻蛉花はただ香るだけ










「おお~、懐かしい景色。


ちっとも変わってねえじゃんか!」



街中のにぎわいが届いてくる、ルースの北東部に位置する正門。


花の季節の盛りを終え、街全体に緑色が増えつつあるのが、この場からもよく見える。



「ここに戻るのも、久しぶりだな~」



正門の前に立ち、旅姿の若い青年がぐぐっと大きく伸びをする。


炎を思わせる赤い髪をかきあげ、その隙間から耳につけたたくさんのピアスが覗いてきらりと光を弾く。


風が流れ、彼が首に巻いている薄手のマフラーがひるがえった。


野宿が多い旅人には、この季節でも防寒具は少々必要なのであろう。



「何年ぶりだ?じいさん元気にしてるかな?


じいさんもう歳だし、いい加減工房長引退して隠居してるよな……


ま、別にいいか。


それより、かわいい女の子、増えてるといいな」



青年はにっこり笑うと、荷物を背負って門をくぐった。









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