愛しい君~イジワル御曹司は派遣秘書を貪りたい~
8、苺キャンディは愛の味
 夢を見ていた。

 とても懐かしい夢。

 その年のクリスマス、兄はいなかった。

 寄宿学校に行ってしまったからだ。

 1人ぼっちのクリスマス。

 ケーキもプレゼントもない。

 お父さんもいつも仕事で、この10日程顔も見ていない。

 誰もいない冷たい家。

 1人になるのが嫌で、家を出て行くあてもないままただひたすら歩いた。

 私、生まれてこなきゃ良かったな。

 私がいなければ、お父さんもお母さんも喧嘩なんてしなかったかもしれない。

 お兄ちゃんからお母さんを奪う事もなかったはずだ。
 
 悪いのは全部私。

 横断歩道を渡ろうとした時、悪魔の囁きが聞こえた。

 "お前なんて死んでしまえばいい”
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