苺なふたり
苺なふたり
 



どんくさくて要領が悪くて。

 素直すぎるお人よし。

 高校時代からの親友である亜季を形容する言葉はこんな感じ。

 あ、いつもいじけて人の後ろに隠れる弱虫ってのもあったかな。

 でも、それは彼女の魅力でもあるのだ。

 その魅力を誰よりも理解し、愛しているのが信吾だ。

 
「亜紀は信吾に愛されて、ホント幸せだよな」

 亜季から電話があったことを話している私に届いた声。

 くつくつと肩を震わせて笑う目の前の男を軽く睨み、コーヒーを飲む。

 砂糖とミルクが入っていない、ブラックコーヒー。

 功司が目の前でおいしそうに飲んでいるのを見ているうちに飲み始めて、最近ようやくおいしいと思えるようになってきた。

 ホテルのカフェで出されるコーヒーはそのお値段もお味も普段味わえない高級なもの。

 一杯300円ほどのコーヒーでも十分おいしいと思い飲んでいる私にとって、一杯1200円もするこのコーヒー、味わって飲まなくてはもったいない。

「で?亜季は昨日ハネムーンから帰ってきたんだろ?会いに行かなくていいのか?」
「うーん。亜季はお土産を渡したいから今日にでもおいでって言ってくれたんだけど、側にいた信吾が電話に出て、今度にしてくれってさ」
「は?」
「あ、別に私を拒否してるわけじゃないのよ。信吾はなんといっても私の幼なんじみだし、小さな頃からの友達だし」
「……友達ねえ」

 意味ありげににやりと笑う功司を、一瞬睨む。

「おー、こわ」と冗談めかして言われても無視。

 本当、面倒くさい。






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