幸せの花が咲く町で
◆香織

心は暗く重たくて





(どうなってしまうんだろう……)



ここのところ、自分の身の回りで、なにかが動き出しているような感覚を感じていた。
それは、私の身近な所ではあるけれど、私自身のこととは違う。



先日は、衝動的に夏美さんを探しに桃田に行ってしまったけれど、残念ながら出会えることはなかった。
10時過ぎまで地下街をうろうろしたけど、夏美さんの姿はちらりとも見かけなかった。
途中で、トイレに行ったりしたから、運悪くその時に通り過ぎて行かれたのか、あの日はたまたま地下ではないルートを通られたのか……



帰りの電車の中で、私はなんとも言えない気分を味わっていた。
私は一体何をしてるんだろう?
まるで探偵みたいな真似をして……
それに、もしも男性と一緒にいる所をまた見てしまったら……
私はどうすれば良いんだろう?
夏美さんに詰め寄る?
堤さんに言いつける?
そのことで、お二人の間に亀裂が入ったら、私はどう責任が取れるっていうんだろう?



無責任な自分の行動に落ち込んだ。
やっぱり、こんなことをするのは良くない。
今日は出会えなくて良かったんだ……
もうこんなことをするのはやめよう……



でも……私が何もしなくても、事は進展するかもしれない。
ただの火遊びなら、放っておけばいつかその火は消えるんだろうか?
もしもそうなら、その間、堤さんにバレさえしなければ良い。
そうすれば、堤さんは傷つかずに済むから……



心の中に不安が広がる。
他人のこととはいえ、私にとっては大きな問題だ。
でも、心配事はそれだけじゃなかった。



私は昼間のことを思い出す。
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