愛しい君~イジワル御曹司は派遣秘書を貪りたい~
17、コーヒーの匂いは好きですか?
 成宮は誉が退院した次の日には退職していた。

 多分、あの事件は警察沙汰にならなかったので、裏で誉や西島さんと取引したのかもしれない。

 恭介さんと誉の策略によって解任された会長は、日本庭園の見事な自宅で錦鯉の世話に明け暮れている。

 会長がここに乗り込んで来なかったところを見ると、誉が怖くて大人しくせざるおえなかったのか。

 そして、1月下旬になって誉の頭の包帯が取れたある日の事。

「不味い。瑠璃、このコーヒー淹れ直し。また手抜きしてマシンの方入れただろ?愛情足りなすぎ」

「今はマシンの方が美味しく出来んのよ。みんな自分で淹れてるんだから、あんたも自分で淹れなさいよ」

「お前、俺の秘書だよね?上司の命令は絶対だよ。淹れ直して」

 誉が私にカップを手渡す。

 何様のつもりだ!
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