サヨナラからはじめよう
惑わせないでください
「おはようございます」

事務所に入ると、先に来ていた中村君がこちらを見た。
私に気付くとすぐにやって来た。

「おはようございます。涼子さん、あの・・・」

「ごめん、中村君。この前は散々迷惑かけまくって」

「いえ、それは別に構わないんですけど、それよりも・・・」

「ごめん。言いたいこともわかってる。ちゃんと説明するから今はちょっと待ってもらえないかな。なんか今いっぱいいっぱいで」

それだけ言うと中村君はしばらく何かを考えていた。

「わかりました。涼子さん、もう二日酔いは抜けましたか?」

「え?」

「あの調子じゃ昨日は二日酔いだったでしょう?」

ニッといたずらっぽい顔で笑う。
それだけで彼が気を使ってくれているのがわかった。
やっぱり彼ははよくできる子だ。
一瞬で状況を把握して対応してくれるのだから。
今はその優しさに思い切り甘えさせてもらおう。

「ばれた?久しぶりにやらかしちゃったよ」

ハハハと笑いながら互いに席に着く。
中村君のおかげで気持ちを軽くして仕事を始めることができた。
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