ぬくもりを感じて
別れと出会い
木吹凛花16才。

普通なら高校1年生の知的な美少女・・・。


そして彼女は現在、両親といっしょにアメリカはヒューストンに住んでいた。

両親はアメリカ航空宇宙局の職員だったが、ある大きなパーティーに出かけた帰りに狂った暴走車に突っ込まれてビルの店舗の中で炎上し、ビルの中にいた人たちも巻き添えとなって死んでしまった。

合同葬儀を終えて、凛花は唯一の身内でもある兄の住まいへと向かった。


兄はすでに日本で就職していたため、アメリカでは暮らしていなかった。



兄は木吹 瑞歩 きぶきみずほ 28才。
仕事は何かの研究という以外は凛花は知らなかったが、凛花が10才頃の記憶では陽気で楽しい兄だった記憶がある。

最近もメールでのやりとりはたまにしていた。
今年は兄のところに遊びに行きたいと話したこともある。

しかし、できればそれは両親が仕事をしている間の休日で・・・という理想はあったが。



「えっと、このあたりなんだけど・・・。木吹・・・って・・・あった。
あれ、表札はあるのに、しまってるし、まるで誰も住んでいないみたい。」


瑞歩の姿はなく、郵便受けにもチラシなどがいっぱいになって空き家状態なのは明らかだった。



「そんなぁ・・・そんなウソでしょ。」


小さなスーツケースを引きずりながら、兄の家から見える神社の階段を上がる。


「まさに、神頼みだわ。
どうしよう・・・アメリカでは弁護士さんのすすめで、みんな引き払ってお兄ちゃんのところに来たというのに・・・。」


凛花が階段をのぼりきろうとしたとき、神社からボールが転がってきて凛花は転がってきたバレーボールを誤って踏ん付けてしまい、体のバランスをくずした。


「きゃ、きゃあ!!!」


一瞬目がくらんで凛花の脳裏にも『だめだ、転がっておちる!』とわかっていた。


すると大きな手が凛花の腕をつかんで、ぐいと引っ張られた気がした。



「えっ?!」

おそるおそる目を開けると、見知らぬ男が自分を抱きしめていた。


「あ・・・あ・・・あの・・・」


「落ちなくて幸いだ。でも、この程度のボールで避けられないとは鈍いな、運動神経。」


「なっ!!何なの、この失礼な男っ!それに何だかむさくるしい。」


「ははははっ、よく言われるよ。
あ、君だな・・・瑞歩の妹っていうのは!」


「どうしてお兄ちゃんのこと・・・?
あの、お兄ちゃんはどこにいるかご存じありませんか?
私は、さっきアメリカからこちらに着いたばかりの・・・」


「凛花ちゃんだろ?
瑞歩はもうここにはいないよ。
手紙を預かっている・・・来いよ。」
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