恋じゃなくてもイイですか?
May*ミーちゃんの帰還


引っ越すと決めてからの日々はあっという間だった。


「新しく女の子が住むって?ダメよ~、ダメ、ダメ!ハルニレはまだ独身なんですからねっ!」なんてハルニレの祖父母に言われてしまうかもなんて不安は、一蹴された。


菓子折り片手に、やにれ荘の後ろに建つ、ハルニレの祖父母の住む平屋に挨拶に行くと、


「まぁ、やにれ荘に新しい入居者が?まぁ、かわいい娘さんだこと。困ったことがあったら、いつでも訪ねていらっしゃい」


とてもお歳には見えない若々しいお婆さんが、ニコニコしながら、家の中へ通してくれた。


お婆さんはお喋りをするのが好きらしく、初対面の私に、まるで友達のように、やにれ荘が当時、寮として機能していた頃の話を話してくれた。


よかった、いい人そうな方でとホッとしたのを覚えている。


お爺さんの方は、はきはきした奥さんと比べて、おっとりしている印象を受けた。


多分、ハルニレの独特の雰囲気はお爺さんからの遺伝なのだろう。


挨拶が済んで、入居の手続きをして、インターネットの回線を引いたら、いざ引っ越しだ。


今まで使っていた家具は、同棲した部屋に全て置いて来てしまった。


中には私が買ったものもあるのだけれど、彼との思い出を吹っ切って、新しい一歩を踏み出すために、家具は全て新調した。


結婚資金と思って、少しずつ貯めていたお金が吹っ飛んだけど、別に相手も予定もないし!と自虐的になりつつ、「新しい一歩」と自分を励ます。


暫くはお昼はお弁当を作っていくことにしよう。


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