夢のような恋だった

【いいですね。この案で話進めていきましょう。キャラクターのイメージを作ってもらえますか】

山形さんに大まかな構想をメールで伝えたところの回答がこれだ。
私はホッとして、ノートに主人公の少年のイメージを描き出す。

目がくりっとして、くせ毛の少年。
無邪気な男の子というと、無意識に昔の智くんを描いてしまう。


「違う違う」


髪の毛を消してサラサラなものに直す。目も、もう少しつり目な感じにしてみよう。
手直ししたら今度は草太くんみたいになった。

でもいいかも。
草太くんの強引さは、道を切り開いていく少年のイメージには合うかも知れない。


そんな風に構想を練るのをメインに、私は普段通りの暮らしをしていた。

先に出す予定の絵本は、後は何度か入る校正チェックをするくらいで、大まかなところは決まっているから順調だ。

もちろんバイトの本屋にも行っている。
私と草太くんが仲直りしたことを知った茂くんが一度来たけど、私の顔を見て特に何をいうわけでもなく帰っていった。

草太くんは、週に何度かやってきて、ご飯だけ一緒に食べて帰る時もあれば、泊まるときもある。

相反する感情は、回を重ねるごとに落差がなくなっていって、今はなんとも思わなくなった。
大人になるって適応性もつくことなのかもしれない。


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