スイートな御曹司と愛されルームシェア
第五章 裏切られました
「絶対にこの線を越えちゃダメよ。もし踏み越えたら、即110番通報するからねっ」

 咲良はバスルームへと続く短い廊下に、立ち入り禁止を示すべく黄色いビニールテープを貼った。

「なんかテレビドラマでよく見る犯罪現場みたいですね」
「あなたが踏み越えたら犯罪現場になるわよ」

 咲良がじろりと睨むと、翔太が両手を胸の前に挙げて真顔で答える。

「わかってますってば。ラッキーになって大人しくテレビを見ていますから」
「絶対よ」
「はい、約束します」
「絶対の絶対よ」
「はい、絶対の絶対に線をまたぎませんし、近寄りません」

 咲良が借りているこの部屋は、七畳半の居室とキッチン、それにトイレとバスルームがあるいわゆる1Kの間取りだ。翔太のいる居室との間に短い廊下があるため、直接バスルームが見えることはない。それに、翔太は実はラッキーの生まれ変わりで、間違えて男になってしまったんじゃないかと思うほど、そばにいて危険を感じることはない。それでも、やはり身も心も無防備になるシャワーの間は心配なので、しつこいくらいに念を押してしまう。

「もし線を越えてこっちに来たら、即追い出すからねっ」

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