可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
3 --- ちいさな世界と数字の海


(3)ちいさな世界と数字の海



渚と別れたあたしは、どこへ寄るでもなくまっすぐに家を目指した。





電車の中でも街の中でも。

制服姿の高校生たちは、どの子もみんな誰かと一緒にいる。





ひと組のカップルがあたしの前を歩いていた。




まだ付き合いはじめたばかりなのか、手すら繋がずに、彼氏も彼女も会話しながらときおりぎこちなく相手の顔をちらり見する。

そして偶然視線が合うと、すぐにふたりして照れたように、パッと顔を逸らし合う。





----------なにあれ。純愛系?





ほほえまし過ぎて、ダサいのすら通り越してる。

ちいさなちいさな、ふたりにしか見えない完璧に満たされた世界。




あの痛いくらい初々しい彼氏と彼女の間には、
ふたりだけが住むことを許されたそんな世界があった。




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