いってらっしゃい
短編その②~待ってるね~
「ねぇ」

横向きになってウトウトまどろんでいると後ろにピタリと身を寄せたままのあなたが、むき出しの肩の上に頭を乗せてきた。

「……ん?」

目を開けると絡み合うようにくっついているふたりの素足が見えた。
ぼんやりとした視界に、大きさも、太さも色も違うふたりの素足がだんだんはっきりしてきた。

「お土産、なにがいい?」

「うーん……」

心地よい疲れと眠気でまだ頭がハッキリしない。

そっか。
彼は明日、出張で海外(アメリカ)へ行ってしまうんだ。

「お土産……んー」

海外へ行ってしまったらしばらくは会えない。
それでも待っててといった彼の言葉がわたしにはある。

「アメリカから戻ってきた姿、かなぁ」

「それだけ?」

耳元に聞き慣れた心地よい声。
わたしの発言に意外そうだ。

「どんな顔して帰ってくるのか楽しみなの」

失敗か成功か……もちろん、成功して眩しいくらいの笑顔で帰ってくる彼の姿が思い浮かぶけど。

顔を上げて微笑むと、複雑さと……喜び? なんとも言えないような表情が返ってきた。
そして次の瞬間、後ろから強く抱き締められた。

「やっぱりお前の存在、俺の中でスゲーでかいよ」

熱の冷めない体に、熱い想いが伝わってくる。
わたしも向き直って強く抱き締め返す。

寂しくないっていったらそれはウソになるけれど、彼の不安材料にはなりたくなかった。

いってらっしゃい。
わたしはここで待っているね。


おわり。
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