恋をしようよ、愛し合おうぜ!
20 (野田真吾視点)
初めてあいつに会ったとき、厄介な女に出くわしたと思った。



茶色の巻き髪、化粧映えする整った顔立ち。
高そうに見える服に、俺でも知ってるブランド物のバッグと靴を、見事着こなしている。
そんななつきの外見を見た俺は、「上っ面だけ整えて、中身は空っぽな浮ついた女子大生みたいなやつ」と、4秒で判断を下した。

何も女子大生全員がそんな奴ばっかだとは、俺だって思っちゃいない。
ただ、なつきは女子大生くらいの年齢にしか見えなかったから、そう思っただけだ。
もちろん、ハタチは過ぎてることくらいは、俺にも分かっていたが。

とにかく、もうすぐ34になる俺とは年が離れてるだろうな、とは思った。


なつきには、世間の荒波に揉まれないよう、親とか周囲から手厚くフワフワと、そしてガッシリと守られて育ったお嬢様、みたいな雰囲気がある。

俺的には悪い意味じゃあないんだが、着飾ってる外だけ見たとき、「仕事どころか何にもできなそうなこいつに、仕事任せて大丈夫か?」と、つい思ってしまったのは事実だ。
だから、なつきとは仕事したくないと思った。
と言うより、関わりたくないと思った。

だが実際のところ、なつきは仕事ができる女だった。
俺の予想を大きく上回るくらいに。
そして、「こいつは何も知らないお嬢様だから頼りにならない」というのは俺の思い込みで、完全な俺の勘違いだったと、なつきと一緒に仕事をし始めて、すぐ気がついた。

なつきは仕事ができるだけじゃない。
適度に明るく、ユーモアのセンスもあって、一緒にいるとホッとする。
それでいて構いたくなるから、ついあれこれ言ってしまう俺に、あいつはむくれながら、ちゃんと正論を返してくる。
それには筋が通ってるから説得力がある。
頭空っぽどころか、すげー聡明な女だと思う。

そんな女といろんな話をするのは楽しいし、退屈しない。
そしてなつきがいると、その場が華やぐ。

俺自身の経験上から、きっとこいつは、やっかみ受けやすいタイプだろうなと察した。


荒川と話しているときのあいつは、とても幼く見える。
それこそ女子大生みたいに。
でも、部長やレンといった、俺よりも年上の人と話す時は、とても大人びて見える。
背伸びしたようではなく、両足はしっかり地に着いてる感じ。

今まで俺は、つき合う相手の年の差なんて考えたこともなかったし、気にもならなかったが、「なつきは年、いくつだろう」とふと思った。
過去つき合ってきた女たちは、年下から同年、年上と様々だったし、俺はそのことを、ただ「そうか」と受け入れていた。

つまり、年齢(トシ)なんざ関係なく、単にあいつのことをもっと知りたいと思っていただけだと気がついたとき、「あぁ俺、なつきに惹かれてんだ」とハッキリ自覚した。


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