恋物語。
story.15

お仕置き




―11月ももうすぐ終わり。


INT Interとの第3弾のコラボカタログが、うちの倉庫にも届けられて早数日。
私的にはよく分からないけど…なぜか今回のカタログの減りが今までで一番早い。


前回から登場した慎一くんのファンが確実に増えている…んだと私は思ってるんだけど…。
だって今回の慎一くん…“可愛い”印象を完全に封印している表情だったんだもん…。


彼氏(聡さん)がいる私ですら…ドキマギしてしまうぐらい…。




「さ…準備しよ。」


私は仕事を一旦切り上げて休憩室へとやって来た。
そこの流し台にある電気ポットに水を入れてコンセントを差す。

これは社員の中で一番下の私の仕事でもある。
お昼にカップ麺やお味噌汁を食べる人がいるから。




「これでよしっと。…戻ろ。……っ!」


そう独り言を言い休憩室を出ようとした時、一つ上の男性社員・高橋さんがやって来た。



「…お疲れ様です。」



「お疲れ様。」


高橋さんは入り口を入ってすぐにある自動販売機でコーヒーを買っていた。



「それじゃあ…」



「あ、坂井さん。」



私は彼の横を通りすぎて休憩室を出て行こうとした時、高橋さんに呼び止められた。



「はい…?何ですか?」



「今回のカタログ…ものすごく好評みたいだね?」



「え…っ!?あっ…そうみたい、ですね…」


振り返ってそう聞けば言われるとは思ってもみなかったことに驚く。



「おかげで…店舗からの発注要請が多いよ。」



「あ…そうなんですね…」



高橋さんは店舗からの発注要請を受けて各店への商品発送数を決める仕事をしている。
だから各店で何が売れて、どういう物が求められているのかをいち早く知っている人でもある。




「それもこれも…モデルがいいからかな。」



「えぇ…っ!?あ、あぁ…彼、すごくかっこいいですからね。」



「そうじゃないよ。」



「え…?」


その言葉に一瞬驚いてしまったけど…私は慎一くんのことだろうと思った。
だけど…それを否定する言葉が優しい表情の高橋さんから聞こえてくる。





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