櫻の王子と雪の騎士 Ⅰ
Ⅸ*白亜の女神と真実







 ***



 
 
 ああ、また


 
(暗い場所......)



 これで三度目



 先の見えない真っ暗闇



 ルミはその中でぼんやりと立っていた



(ん.........??)



 いつまでそんな風にしていたのだろう



 ふと、目の前に何かが見えた気がした



それは



小さな小さな、一筋の光



ルミはそれに向かって走り始める



少しずつその光は大きくなる



ようやくここから抜けられる



安心感に近いそれに、笑顔が浮かぶ



(はぁ、はぁっ、)



そして遂に



その光が手に届く



その時だった



───────ルミ



(ーーーっ! 何!?)



突然頭の中に響く声



ああ、これもまた



これで何度目か



最近はなくなっていたのに



───────ルミ



何? 一体何なの??



───────もう、時間がない



え?



───────時間が無いんだ、ルミ



何が言いたいの?



───────全てが動き出してしまう



 まるで言っている意味が分からない



 私に何をしろというのだろう



 ───────早く、私の元へ



 急かすように切羽詰まった声で訴える



 ───────私は《白亜の女神》


 
過去に何度も聞いたことがあるこの台詞



白亜の女神って何?



分からない



あなたの姿を見せてよ



ルミは叫んだ



頭に響く声に訴えるように



その瞬間



目の前の光が変化し始めた



徐々に光が弱まり



ゆるゆると形を表し始める



その姿を目にした途端



ルミははっと息を呑んだ



そこに居たのは......






「わたし......?」







目の前に自分がいた



正確には、自分によく似た人



背も少しだけ高く



顔は自分よりもハッキリとし



体つきも今のルミより女性らしい



自分を幾らか成長させたようなそんな女性が目の前に居るのだ






───────そうだ



───────私は、お前



───────そして、お前は、私





目の前の自分が、一歩ルミに近づく



ルミはそれに合わせて一歩後ずさる





───────早く、私の元へ





力強い濃紺の瞳がルミを射抜くように見つめる





───────《白亜の女神》の元へ





その声と共に




ルミは、目の前の自分が放つ光に




優しく、包まれていった





───────








< 124 / 195 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop