東雲沙紀の恋の事件簿―見合い編―
「後は若い者同士で、行こうか」
「はい、部長。東雲、また月曜に」

部長と課長は個室から出ていき、南山と私だけがぽつんと椅子に座っている。

というか南山に告白してもないし、気持ちをバラされてるし、逃げ出したい。
うん、逃げよう。

「私、帰る!」

私は椅子から立って、急いでドアに向かい、ドアに手をかける。

「待てよ」

ドアにかけている私の手を、南山は手を重ねる。

「は、離してよ!」
「逃がさない」

南山は私の手を引いて、私を壁ぎわに追い込むと、両腕を出して、ドン!という音が個室に響いた。

私は南山の両腕に閉じこめられ、背中には壁があって動けなくて俯く。

「東雲、顔をあげて」
「嫌だ」
「あげて」

南山の声が強くて、恐る恐る顔をあげる。

「あっ…」

南山の顔は怒ってなくて、まだ顔が赤い。

「俺さ、東雲のこと、警察学校の時から好きなんだ」
「南山…」
「他の奴と気が合わなくても、お前だけは俺のことを気にかけて話してくれてたし。同じB警察署になった時は嬉しかった」

南山は両腕を降ろすと、私の髪を右手でそっと撫でる。

「随分めかしこんでるな」
「馬子にも衣装でしょ?」
「そう思ってない、似合ってる」

普段は自信家で気難しい感じの南山なのに、今は愛しいように見てくる。

 (どうしよう、返事を言いたいのに…)

ずっと片想いしていて、告白前に見合い話があって、南山は無関心なんだと思っていた。
けれど南山からの告白で、ちゃんと両想いなんだと自覚する。

「東雲、返事は?」
「……き」
「は?」
「好き。南山が、好き……」
「良かった」

南山は私の肩に手を置くと、オデコを私のオデコにこつんと合わせる。
もう少しで、2人の唇がくっつきそうなくらいの距離だ。

「東雲沙紀、確保」
「んっ…」



これが、私と南山の恋の事件簿の始まり。


ーfin ー

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