最も危険な  ルームシェア
δ.苦肉の選択
週明けの朝

僕は寝坊して初めて遅刻した。

始業時刻の後にタイムカードを押したため

フロアにガシャンと音が響いた。

「滝野、二日酔いか?飲み過ぎるなよ!」

営業の誰かが言った。

「わかってるよ。」

声がした方へ返事をしておいた。

仁科はすでに外出の準備中で

僕とのミーティングは後回しにされた。

「おはよう。」

「おはようございます。」

「遅刻して悪い。」

「いえ。この案件ですが今朝先方からメールでご承諾をいただきました。」

「了解。」

「午後詳細の確認に伺う約束も取り付けてありますのでよろしいでしょうか?」

「了解。」

「それから警備で車検に出されたので今日は代車です。」

「了解。」

彼女はテキパキとこなした。

「体調は大丈夫ですか?」

「大丈夫だ。」

「でも…」

「どこか変?」

「目が真っ赤です。」

今朝慌ててコンタクトをしたせいだろうか。

僕はすぐ目薬を注した。

「これでいいだろ?」

「そうですね。」

シェアハウスは決まったのだろうか?

僕は気にしていた。

だが僕から話題にすることは避けた。

「滝野さん、あとで相談したいことがあるんですけどいいですか?」

「了解。」

僕はピンときた。

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