口の悪い、彼は。
6.ツンツンリーマンの恋人。

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***


さすが部長だ。

休日には全く現さなかった角が見える。


週明けの昼下がり、私の目に映る部長はいつも通りツンツンとしていて、今も2年目の営業さんに向かって吠えている。

どうやら、彼は販売店との待ち合わせの時間に遅れるというポカをやらかしてしまい、販売店から直々にその報告が部長の元に入ってしまったらしい。

さっき外回りから帰ってきた途端、部長に呼び出しを食らっているのだ。


「新人気分はいい加減にしとけよ!?つーかお前、自分が何の仕事をしてるかもわかってねぇんじゃねぇのか!?」


あーあーあー。

時間に遅れるなんて、一番やっちゃいけないことを……。

私も出さなきゃいけない資料があるのに、ツンツン部長のところに持っていくなんてすっごい憂鬱なんだけど……。

どう考えても、仕事中の部長が優しく接してくれるとは思えないから。

まぁ休日も角は生えなかったとは言え、特別優しくしてくれたってわけでもなかったしなと思いながら、はぁ、とため息をついて再びキーボードを叩き始めた時。


「うへー。やっちまったのか、あいつ」

「あ、喜多村さん。お疲れ様です」

「お疲れー。これ、今日の分。よろしく」

「はい。確かに。今日は早いですね」

「3時から企画に呼び出しくらっててさ。まぁ、お目当てのところはしっかり取ってきたからさ」

「営業に企画に、喜多村さん毎日忙しそうですよね」

「いやー、まだまだだよ」


私は差し出された伝票を受け取る。

さすが喜多村さんだ。

最近は企画の方にも引っ張りだこだというのに、営業の仕事もしっかりこなしていて、本当にすごい人だと思う。

 
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