イージーラブじゃ愛せない
○最愛フレンズ○

○最愛フレンズ○



1月も半ばになろうかと言う頃。珍しく風間くんから『ふたりで』と飲みの誘いがあった。

風間くんとも3年越しの友達だし、ジョージやりんがいない日の仕事帰りなんかに2人でご飯に行く事だって今まで何度もあった。

けど、こんな風にわざわざ呼び出されるのは初めてかも。


そして終業後、ふたりで向かい合って座った【もぎり】の席で、神妙な表情をした風間くんの口から出た言葉は。


「今日、主任に呼ばれてさ。……辞令の報告受けた。4月から新潟だって」


ついに私たち4人がバラバラになっていく宣告だった。


「正式な辞令は来週の朝礼で発表されるけど、一応その前に、って事で言われたんだ」


口元にカーブを描きながらも眉尻を下げて風間くんは静かにそう話す。


試験に受かった時点でいつかは来る覚悟をしていた店舗移動の辞令。けれど、いざそれが友人の身に下されると、やっぱりショックだ。

どう声を掛けていいか分からなくて沈黙が流れる。辞令が出るのが早い方が当然出世も早いのだから本来なら『おめでとう』と喜ぶべき事だけども。

けれど、逡巡した挙句、私の口から出たのは

「……それ、りんには言ったの?」

やっぱり、残される友達を心配してしまう言葉だった。
 
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