変換予測
変換予測
 友達とラインで話していた時のことです。
 
 ディズニーランドに行く日を相談していました。
 
 いつにする?――と言おうとして、『いつ』と入力したところで、変換予測が表示されます。
 
 最初に表示されたワードは『いつも』でしたが、『いつに』かと思って押してしまいました。
 
 すぐに消そうとしましたが、次のワードの変換予測の一番最初を見て指が止まりました。
 

『見てる』


 そこは直近で入力したワードが表示される位置です。
 
 あれ? ――と思いました。
 
 何気なくタッチすると、さらに次の変換予測は『よ』でした。
 
 つなげると『いつも』『見てる』『よ』です。
 
 そんな文章を使った覚えはありませんでした。
 

 そして、その次は『プーさん』でした。
 
 これは使った記憶がありました。
 
 お客さんからぬいぐるみをもらった時のお礼のメールです。
 
 その次は『の』、そして『左目』……?
 
 全て並べるとこうなります。
 

『いつも』『見てる』『よ』

『プーさん』『の』『左目』


 もちろん、そんな文章を入力した覚えはありません。

 気味が悪くなって、飾っておいたプーさんの左目をよく見ると――カメラの小型レンズ!

「ヤダなにこれ!?」

 ぬいぐるみの頭をつかんでゴミ箱へ投げ込みました。

 ぬいぐるみをくれたお客さんの善良ぶった顔が浮かびます。

 妙にカン高い声で「たまたまゲーセンで取れたから」とか言ってた。 
 
 こんな陰湿な企みがあったなんて……。

 ずっと見られていたと思うと、虫に身体中を這いずられたみたいに気持ち悪いです。

 スマホに『教えられて』いなかったらまだ覗かれていたでしょう。


 そう考えたらスマホに感謝の気持ちが生まれます。

 ありがとう――とスマホに入力してみたくなりました。

『あ』と入力したら、変換予測に『開け』と表示されます。

 よく使いそうなワードです。

 でもスマホがまた何か教えてくれようとしている。

 そんな風に思いました。

 タッチして変換予測を決定――次は『て』です。


『開け』『て』?


『て』で決定すると、その次にはまた『開け』が。

 そしてまた『て』です。

 その次も。さらにその次も。
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