追憶のエデン
Episode3
――ふわり…


心地良く優しい風が頬を撫でる


――ふわり…


仄かに香る甘い香りが鼻腔を擽る


「…っん」


重く閉ざさしたままの瞼はそのままに、気持ちのいいシーツとふかふかなベッドの感触で、今寝かされている場所は、自分の部屋に置かれていた物より、遥かに高価なものだろうとボヤけた頭で考える。


それと同時に、自分の身に起きた事はやっぱり夢じゃないのだという事に辿り着いてしまう。


まだ向き合いたくないと心が拒否し、瞼を降ろしたままユラユラと意識の淵で微睡んでいた。



――イヴ、愛してるよ
永遠に、君だけを…



(えっ…?)


切なげな声が聞こえた気がした。



夢か現かは分からない。けれど、ゆらゆら漂っていた意識を引き上げるには十分だった。


「おはよう。
って言っても、今は夜だけどね。」


「ルキフェル……」


あぁ、彼がここにいるとはそう言う事かと、ぼーっとした頭でもすんなり納得してしまった。
窓を開け、バルコニーに佇み月の光に照らされている彼は儚く、妖艶な微笑みをこちらに向けていた。それはとても幻想的で、彼が人間ではない事を強調する。



「そんなに僕を見つめてどうしたの?」


「別に……月が綺麗だなって。」


意識してルキフェルを見ていた訳でもないが、見ていたのは紛れもなく真実で、特別な意味合いなどないが月に照らされたルキフェルが綺麗だと思った。
しかし、それを彼に伝える気にはなれなかったから、敢えて月だけを綺麗だと言ったのだ。
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