恋の味【更新中】
小学時代


「…春の匂いがする」

暖かな風が私の頬を撫でる。


ー…今日からここが私の学校かぁ


そう思うと、気持ちが重くなった。

校門の目の前にただただ立ち尽くしている私をチラチラ見ながら、ランドセルを背負った子供達が通り過ぎていく。

ザァ…と、木々が揺れ、桜の花びらが舞う。

それと同時に、浅く被っていたために、学校指定の黄色い帽子が風に乗って飛ばされた。

私は、飛ばされていく帽子を見ながら、きれいだなぁ、なんて考えていた。



「はい。なんで帽子、拾わないんだよ」





はっとした。

声が聞こえた前方へ視線を向ける。

目の前には黄色い帽子が突き出されていた。

「ありがとう」

とだけ言って落としてしまったそれを受け取る。

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