スセリの花冠
第三章

ティオリーン帝国の王

ディアランの隊を含め、近衛兵達がティオリーン帝国の首都、ティサに戻ったのはその日の午後であった。

ティサでは早々と兵達の凱旋を祝う催しが開かれており、大変な賑わいである。

民衆も近衛兵達をひとめ見ようと城門前の大広場に集まっている。

その真ん中をディアランが先頭となりゆっくりと通ると、若い女たちを中心に、キャーキャーと歓声が上がった。

「ディアラン様ーっ!」

「素敵、ディアラン様!」

口々にディアランの名を叫ぶ女達に、愛世は驚き眼を丸くした。

「ディアラン、あなたって凄い人気なのね」

ディアランはそんな愛世にフッと笑うと、手綱を裁きながら彼女の耳に口を寄せた。

「殺されるなよ」

もう既にディアランと馬に乗っている愛世は、刺すような視線を感じて背筋が凍る思いであった。

「冗談だよ。さあ、あと少しだ」 

ディアランはそう言うと、優しく笑った。

****

「愛世。先に俺の屋敷で待っていてくれ」

城内に入るとディアランは愛世を馬から降ろし、使用人に自分の住まいへの案内を命じた。

取り敢えず王に会い、山賊狩りの結果を直接報告しなければならない。

愛世の事はその後で、うまく言おうと思っていたのだ。

ところがー。

「ディアラン!」

よく響く低い声が背後から聞こえたかと思うと、ディアランの部下が慌てて片膝を地に付け頭を垂れた。
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