彼に殺されたあたしの体
一軒家
ジットリと肌に張り付くような暑さを感じる梅雨を抜けて、セミの鳴き声はせわしなくなった。


7日間という短い期間でパートナーを見つけるため、みな必死に羽音で演奏をしている。


そんな蝉の声に耳を傾けながら、あたしは土の中の虫たちを見ていた。


最近になって虫たちも活発に動き回るようになった。


夏のうちに地上へ出て餌を取らなければいけないからだ。


でないと冬の間に命が尽きてしまうから。


あたしはよく働く虫たちを見ながらほほえましい気分になっていた。


自然界の生き方を目の当たりにしていると思う。


こんなに健気に一生懸命働いているなんて、生きていたころには気づきもしなかった。


虫や動物は自分の命を繋ぐために、毎日毎日努力をしている。


その事を死んでから気づかされるなんて、なんて情けないんだろう。


それほど、あたしは毎日をなんとなくで過ごしていたことになる。
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