今はまだ、このままで。
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「あぁもう、超疲れた…なんでこんな時期にマラソンとかさせるんだろう。だいたいさ、あの人絶対サドなんだよ!だから皆が苦しんでるの見て喜んでるんだよ!」

一歩前を行く少女が頬を膨らせて文句を言い続ける。
ね?と振り返った其処、一歩後ろには、長身のイケメンが二人。



「どんな発想だよ、それ」
「梨乃はマラソン苦手だもんなぁ」
「苦手なんじゃないよ!嫌いなの!」

梨乃と呼ばれた少女が眉根を寄せながらそう言えば、最初の発言をした方の涼二は呆れたように溜息を吐き、後の発言をした方の准一は笑いながら梨乃の頭にポンと手を乗せた。



「准ちゃんは分かるよね?」
「なんだよその言い方!まるで俺には分からない、的なのは」
「涼二はどーせ分からないんだから入ってこないでよー」
「なんだと、テメェ」
「キャー!准ちゃん助けて!涼二がまた苛める!」

梨乃の腕を掴もうと手を伸ばしてきた涼二から身体を避けて、准一の腕を掴んでその身体の陰へと逃げ込む。
涼二の腕から梨乃を守ってやりながら、准一と涼二の間には僅かな火花が散った。



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