孤独女と王子様
☆久しぶりの"友達"~side YUI~
剛さんが勤務するホテルの前で待ち伏せをしてしまって、強引に友達になってとお願いしてから最初の水曜日。

朝5時にアパートを出発。

まだ空は暗いし、寒い。

私は剛さんと紅葉狩りに行くため、最寄り駅から電車に乗って中央北駅へ向かった。

"車じゃなくて、ハイキングは電車でしょ"という剛さんの提案だった。

成瀬川家のお坊っちゃんが電車に乗るのかぁ。

私に合わせてくれているのなら申し訳ないとは思うけど、確かに剛さんの言う通り、これから歩きに行くのに車で行くのは違うのかなぁ…とも思えた。

始発電車に揺られること15分。
階段を昇って中央北駅の改札付近を見ると、剛さんは既に待っていた。

走って剛さんの元に向かう私。

「おはようございます。お待たせしました」
『おはようございます、由依ちゃん。でも僕が早く着いちゃっただけなので気にしなくていいですよ。走らせちゃってごめんなさい』

剛さんはそう言って私に微笑んだ。
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