真夜中のパレード
遭遇




上条は重い足取りで会社を後にした。



――疲れた。


もう、本当に疲れた。




あれから七瀬と木本の件の対応に手をこまねいている間に、
自分の仕事をする時間がなくなり。


気合でぎりぎり終わらせたけれど、
燃え尽きてしまいそうだった。


上条は目蓋に指を当て、溜め息をつく。


気がつくと、
Santanaの前にいた。



上条は二階にある店を見上げる。


……せめて、ここで働いていることだけは
本当だったらよかったのに。


天音さんに会いたい。


心の底からそう思った。


癒やしが必要だ。


いつも彼女のことを考えているけれど、
ここまで切望したのは初めてかもしれないと思った。


電話をかけてもいいだろうか。



一度考えると、
天音のやわらかい肌に無性に触れたくなった。

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