Sweet Lover
12.追えない背中
『キョー兄ちゃんと会うから、遊べないのーっ』

私は無邪気に笑って、梨音に言う。

梨音の、淋しげな顔に気づくような心遣いは持ち合わせてなかった。

頭の中は、もう。
キョー兄のことでいっぱいで。
走って家に帰る。

『ただいまぁ。
 あー、キョー兄っ』

私はその人に抱きついた。
夢の中ではシルエットでその姿ははっきりと見えない。

『お帰り、マーサ。
 こらこら。
 靴は玄関で脱がないと』
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