黒色女子を個人授業
第1章 あなたにとっての私の価値
***第1章***



仕事に片をつけて一息つく頃には夜の9時を回っていた。

斜め前の席に、未だ残業と闘っている同期の女性社員ーー花山の姿を確認する。

私が視線を送ると、すぐに向こうもこちらに気がついた。

何? という顔をしているので、休憩スペースの方をちょいちょいと指差しながら、一服しませんか? の合図を送る。


休憩スペースへ歩く道すがら「仕事はどう?」と彼女に尋ねると、彼女は「そろそろ終わらせて帰るよ」と気だるそうに伸びをした。

「彩香こそ、まだプロジェクト始まったばかりなのにもう残業?」

質問を返されて、私は少々困った顔で「いつものことだよ」と答えた。
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