初恋も二度目なら
俺様部長、炸裂
総務から営業事務へ異動になっても、私はいつもどおり、30分早く出社した。
これは総務にいたときからの習慣で、早く出社をして、そのエリアの掃除をしたり、植物に水をあげたり、お花の水をかえたりしている。
後はお湯を沸かしたり、コーヒーを淹れることも忘れずに。
みんなが出社して、すぐ仕事が始めることができるよう、下準備を済ませておくため。
それに、早く出社すれば、誰もいない女子更衣室でゆとりを持って、制服に着替えることもできるし。

営業事務に配属になって、初めて始業時間から営業エリアで過ごす朝。
誰もいないと高をくくっていたのに・・・いた。

長峰部長が。

条件反射のように踵を返して更衣室に戻ろうとした私の背中に、「おはよう、卜部」という低い声が、フロアに響く。
うっ。気づかれてた。

「どこへ行く」
「えっ!いえ、そのー・・・」

言い訳が思いつかない私は、結局、長峰部長がいる営業フロアへ、すごすごと歩いて行った。
部長の席周辺が掃除できないのは、仕方がない。

「おまえはいつもこの時間に来ているのか」
「ええ、まあ・・部長こそ、私より早く出社してるじゃないですか」
「眠れない」
「え?」
「時差ボケだ」
「あぁ・・・」

部長は一昨日の夜帰国したと、昨日言ってたのが聞こえた。
総務もだったけど、営業も、自分の飲物は自分で淹れることになってると教えてもらったけど・・・後で部長にコーヒー淹れてあげようかな。
と思いつつ、私は、すでに仕事を始めている様子の部長を邪魔しないよう、普段どおり黙々と掃き・拭き掃除に専念した。


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