恋じゃなくてもイイですか?
June*3人目の入居者


食堂の窓から外を眺めると、暗闇の中にぼんやりと浮かぶ柏葉アジサイが目に入った。


庭の隅、丁度、ツツジの垣根の切れ間に柏葉アジサイが植わっていた。


ハルニレのお爺さんの趣味はガーデニングらしく、暇があれば庭の手入れをしている。


やにれ荘の寮中の掃除はハルニレの担当だけれど、庭の管理はお爺さんに任せているみたいだ。




夕暮れ時、スーパーの袋を抱えて、仕事から帰ってくると、庭の隅でお爺さんが作業をしていた。


「精が出ますね。ちょっと休憩しませんか?」


作業が終わったのか腰を上げ、片付けを始めたお爺さんの背中に声を掛けた。


「柏葉アジサイだよ。周りの土を掘り返して、肥料をまいていたんだ」


温かい緑茶の入った茶碗を手に、お爺さんはそう告げた。


「アジサイの仲間なんですか?アジサイっていうと、ブルーのこんもりとした花だけだと思ってました」


「アジサイにも色んな種類があるんだよ。葉っぱが柏の葉に似てるだろう?柏餅を思い出してごらん?だから柏葉アジサイっていうんだよ」


ピラミッドのように真ん中が突き出た形の房に白く細かい花が付いている。その下に付いている葉は、私の知るアジサイとは違った葉だった。


私は白いお餅が包まれた葉を思い浮かべた。


「確かに、似てますね」


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