【完】山崎さんちのすすむくん
強さの隣で



元治二年 三月二十五日


曇り



今日、土方副長が隊士募集の為江戸へと発たれた。


布団を敷くと足の踏み場もなかった前屯所とは違い、未だ空き部屋の多数ある現屯所。


既に腕に自信のある志願者が出尽くしたと思われる上方以外から良き人材を集めるのが此度の目的だ。


故に、副長付きである俺は局長からの示達がない限り、他の監察方同様通常任務に当たることとなる。


しかしながら季節の変わり目故なのか、とかく体調を崩す奴等が多くて困る。


まぁ殆どが家族もおらぬ独り身連中。養生のよの字も知らぬ荒くれ者ばかり。


以前は八木家の奥方や女中さんの目もあり、多少気を遣っている奴等もいたようだが、今では既にごみ溜めのようになっている部屋もある。


虎狼痢(コロリ・コレラの別称)などの時疫(流行り病)が出たりはせぬかと少々不安にすらなる程だ。


何故か我が新選組の医師のようになってきた今日日。


もし機会があれば蘭方医学などもかじってみたいものである。



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