キスはワインセラーに隠れて
14.うなじに残る微熱


「なぁ環」


……そうだ。昨日、藤原さん、いっぱい環って呼んでくれた。

ベッドの中で、ずっとくっついて……


「たーまーき!」


“罰”がどうこうって言ってたのに、やっぱり体がつらかったらしく、部屋に入るなり甘えてきて。


『……プリン食いたい』


私の肩にコテンと頭をもたれてそんなおねだりをする彼は、俺様っていうよりお子様って感じで、可愛いのなんのって……


「た・ま・き!おーい。どこトリップしてんの?」


我に返ると、目の前には本田の顔が迫っていた。


「……わっ! 本田! ……脅かすなよ」


やばいやばい。今、仕事中だった。

私はモップを握り直して、開店前のフロアの掃除を再開させる。


「脅かしてねーし。つか、さっきからずっとぼーっとしてるけど、なんかあったのか?」

「……別に何も」

「ふーん」


つまらなそうに言いつつ、じとっとした視線を送ってくる本田。


そういえば、昨日藤原さんちに行ったこと、本田にはばれてるんだよね……

今日も彼のマンションから出勤したけど、昨日と同じ服装を変に思われないようにかなり早い時間にここへ来たから、泊まったことまでは知られてないはずだけど……


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