今度こそ、練愛
代償

翌日、展示会の撤去は閉店後に行くことになった。
いつもより早めに閉店して、高杉さんと岩倉君と私の三人で。仲岡さんは家庭の事情があるため今回も行くことができず。



坂口さんには会いたくない。



高杉さんの運転する車の助手席で、私は考えを巡らせていた。



今さら弱気になんてなるつもりはないけれど、私の気持ちを貫くには犠牲が大きすぎる。高杉さんや仲岡さん、岩倉君のことも考えると心苦しくなる。



それに、山中さんのお母さんの気持ちは? 



体調を崩して入退院を繰り返しているというお母さんの意志が、何より大事だと思う。店を守るには、坂口さんに頼らざるを得ないのだから。



そんなことを考えると、前になんて進めない。



会場に到着すると、すでにジュエリー部門の撤去が始まっていた。ジュエリー部の邪魔にならないように、私たちも粛々と片付けを始める。



片付けながら会場を窺ってみたけれど、坂口さんの姿はない。



ほっとして片付けを再開。仲岡さんの言うように会場の花の数が明らかに減っていることに気づいた。
私が作ったカラーのブーケもない。坂口さんに移動させるようにと指示された部屋の隅から消えている。



< 187 / 212 >

この作品をシェア

pagetop