麗雪神話~麗雪の夜の出会い~
第二章 「恋」の意味

青空の下、白い雪がわずかにふわふわと舞う昼下がりのこと。

「えいっ」

「うわっ」

セレイアの投げた雪玉がディセルの顔面に直撃する。

「はははっ、やったな!」

今度はディセルが雪玉を投げ、それがセレイアの肩に命中する。どちらの雪も軽くしか握っていないので、あたるとすぐに崩れて危険はない。

ここは姫巫女邸の中庭で、二人の周りにはたくさんの雪だるまが並んでいる。二人でせっせとこしらえたものだ。

仕事の昼休みに、セレイアはディセルを連れて家に帰り、雪遊びを満喫していた。

こんなふうに楽しく体を動かしたのは久しぶりだったので、セレイアの気持ちは晴れ晴れとしていた。

この屋敷に、セレイアの両親はいない。

屋敷どころか、ひょっとすると世界中どこを探してももういないのかも知れない。

というのも、両親は二人とも、セレイアが幼い頃に行方不明となっていたからだった。

物心ついてからはすでに姫巫女であったセレイアは、使用人をのぞけば今までずっとこの屋敷に一人で暮らしてきたから、ディセルの存在は家族ができたみたいで嬉しかった。
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