君と花を愛でながら
第一話 チョコとパンジー
前面がガラス張りのその店は、緩やかな傾斜のバス通りから店内の様子が良く見えた。
ウッド調の内装、入口から左側はたくさんの花で無数の色が溢れ返る。右側のカフェスペースは通りの並木が程よく日差しを和らげて、無垢材のテーブルとイスが並べられている。


高校三年生の時、志望大学のオープンスクールに向かう途中で、私はそのカフェに目が釘付けになった。

大学までは、バスがある。けれど歩けないほどでもなく、少し早めに家を出たための時間潰しにと徒歩で向かっていた。


「あ、明日がオープンかぁ」


扉に貼られた張り紙を見て、肩を落とした。
ガラスを通して見える店内の様子は、左側がカフェの装飾というには余りに花に溢れている。


不思議に思ってもう一度張り紙に視線を戻すと、明日の日付にOPENの文字。
そして、『花屋カフェflower parc』と書かれていた。


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