夏のわすれもの
Chapter3*君はまっすぐ*
彼女は、相も変わらず陣内を思っている。

あいつの心の中で抱えているものを知らずに、ただまっすぐに陣内を思っている。


「変わったな」

喫煙室で一服していた俺に、陣内の声が聞こえた。

隙間ほどドアを開けて視線を向けると、陣内の後ろ姿が見えた。

彼の目の前にいるのは、1人の女だった。

黒髪を毛先だけワンカールさせた、清純系の美人さんだった。

確か彼女はこの前、秘書課を訪ねてきた人だ。

でもあの時は後ろで1つに束ねていて、眼鏡をかけていた。

いかにも、“お局様”だった。

あれからイメージを変えたのかと、俺は思った。
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