らぶ・すいっち
先生は、やっぱり天敵でした



「あら、京香ちゃん。皮むき、上達したんじゃない?」
「えへへ。そう言ってもらえると嬉しいです」

 ベテラン主婦のおば様たちの足元にも及ばないけど、それでも多少の戦力にはなったようだ。

 ゆっくりとした手つきだが、ジャガイモの皮をごく普通に剥けるようになってきた。
 以前のように丸形だったジャガイモが、最後には四角になるなんてことはない。

 驚いているおば様たちを横目に、私はもう一つジャガイモを手に取った。
 手を切らないように、ゆっくりと皮を剥いていく。

 ほんのひと月前までは、こういった包丁使いは全くと言っていいほどできなかった。

 どうしてできるようになったのか。
 その理由は、おば様たちには絶対に言えない。

(土曜日の教室が終わったあと、順平先生の個人レッスンを受けているだなんて口が裂けても言えない)

 言ったが最後。興味津々、好奇心旺盛な土曜グループのおば様たちに取り囲まれ、根掘り葉掘り質問されるのが目に見える。
 絶対、お口にチャックです。
 私は目の前の作業をするために黙々と手を動かした。


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