不機嫌な彼のカミナリ注意報2
7.思い出は思い出
  ―――― 7. 思い出は思い出

 メキメキと嫌な予感がする。
 1Fに赴くため、下へ向かうエレベーターに乗り込むと、俺はこれでもかと盛大な溜め息を吐いた。

 頭が痛い。これは心労から来る頭痛か?
 厄介ごとが大嫌いな俺が、なんでまたこんな目に合うのだ。

『風見さん、J&Uの仲里さんって方がロビーに来られてるそうです』

 藤野からいきなりそう伝言を伝えられ、柄にもなく一瞬動揺してしまった。
 ……俺らしくもない。
 だいたい、なぜ営業部でなくマーケティング部の俺を呼ぶんだよ。おかしいだろう。

 苛立たしさや憂鬱を引きずりながら、エレベーターから1Fのロビーに降り立つ。
 すると、すぐに俺の姿を確認した受付の江木が、あちらです、と目立たない素振りでそっと指し示した。

 ロビーの隅の、いくつかパーテーションで区切られた接客用の椅子に、俺を呼び出したその人物は座っていた。

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