センチメンタル・スウィングス
揺らされる心
「・・・それでおまえは、元婚約者が転勤すると聞いて、どう思ったんだ?」
「どうって、特に何も・・・。しいて言えば、“あ、そう”かな」と私が言うと、和泉さんはククッと笑った。

「“あ、そう”ねぇ。あ、そう。ふーん。“遠くに行くことになっちゃって、寂しいー”とかは?」
「寂しくないですよ。かと言って、遠くに行くから嬉しいとも思わないし。第一、学さんとは全然連絡取り合ってないんですよ?」
「そいつのこと、まだ好きか」
「うーん・・・。そういう感情はもうないです。でも、嫌いじゃない。学さんとは、楽しいことや悲しいことも含めて、色々な思い出を一緒に作ったり、共有したけど・・・私にとって、それはもう過去のことで。あの人にとってもそうだと思うし。結局のところ、永遠の愛を誓う相手じゃなかったってことです」

・・・私が言いたいこと、和泉さんに伝わったかな。
それは分からないけど、目の前にいる彼は、私にニコッと微笑むと、「やっぱり桃はロマンチストだ」と言った。

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