ハートブレイカー
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「おはようございます!岩本課長」
「おはよう、浪川ちゃん」

海堂商事の営業2課の事務職に就いて、1ヶ月と少し経った。

毎朝課の中で一番早く出社し、デスク周りをキレイに掃除する。
床やトイレなどは、清掃業者がキチンと掃除をしてくれているけど、デスク周りに関しては、個人と各課で責任を持って管理をすることが鉄則だ。
その延長に「掃除」も含まれていると私は思っている。

「ウェットティッシュ使わないの?そのほうが効率良いでしょ」
「このやり方に慣れちゃって」

誰かさんの下で営業事務をしていたときから・・・。


『浪川』
『はい、氷室課長』
『今日から香りを変えたのか』
『は?え、っと・・・え?』
『机を拭くときの』
『あ、ああぁ、はい。ラベンダーのオイルを少し、お湯に入れたんですけど・・・きつすぎましたか』
『いや。ちょうどいい』

やっぱりこの人は、ウェットティッシュの残り香が気に入らなかったんだ・・・。

あのときも彼は飄々としたポーカーフェイスだったけど、少しだけ声が柔らかかった気がする。
・・・って、何でそういうことを今頃思い出すのよ、私はっ!

「集中集中」と心の中で言い聞かせながら、私は顔をブンブン横にふった。

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