シンデレラに恋のカクテル・マジック
第三章 軽やかな彼
 そうして土曜日、どうにか帰宅してシャワーを浴びた菜々は、去年買ったリクルートスーツと白いカットソーに着替えて出勤し、生徒の出欠確認や受講講座の管理、電話応対などの仕事をこなした。翌日の日曜日、永輝には休みますと言ったものの、それは外で働くバイトがないというだけのことで、実は通信教育の会社から在宅で引き受けているテストの添削のアルバイトが入っていた。丸付けのアルバイトは一枚あたりの単価が低いが、こうして空いた時間にできるところが都合がいい。

「ふぅーっ、やっと終わったぁ」

 こたつ机の上のプリントを重ねて揃えて封筒に入れ、しょぼしょぼする目をこすって伸びをした。そのまま畳の上にごろんと寝転ぶと、年季の入った板天井が目に映る。

(晩ご飯は何にしようかな……。冷凍庫のご飯を解凍して、卵とツナの丼でも作ろうか……。あ、でも卵がなかった。野菜もないし、買い物に行かなきゃだわ)

 菜々は勢いよく起き上がると、ボディバッグを背負い、エコバッグを持ってアパートの部屋を出た。階段を下りて駐輪場に行き、自転車に跨がる。少し遠いが、クビになった家庭教師先の近くにある業務用スーパーに行くことにする。たまたまバイトの帰りに見つけたのだが、生鮮食品から調味料まで、この辺りでは一番安いのだ。
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