ご近所さん的恋事情
スーパーにて
「ただいま」


「あら、おかえり」


「母さん、どこ行くの?」


2日間の出張を終えた渉は、いつもよりも少し早い時間に帰宅した。玄関に入ると母親が布のエコバッグを片手に靴を履くところだ。


「お醤油が切れちゃって、買いに行ってくる。買い置きがあると思ったらなかったのよ」


「ああ、じゃあ、俺が行ってくるよ。母さんは他にやることあるでしょ?」


「ほんと?助かるわ!よろしくね」


渉はエコバッグと千円札を受け取って、帰ってきたばかりの家をまた出る。

瑠璃子さん、帰ってるかな?

家を出て200m歩くと三差路になっている。そこを右に行けば、瑠璃子のマンションだ。見えるマンションに瑠璃子を思った。出張前日の夜、爆睡してしまい、男としてのチャンスを逃したしまったことを出張中、何度も思い出しては悔やんだ。

朝、目が覚めた時、背中から伸びていた手を見て、大きく落胆した。でも、とてもよく眠れた。
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