エゴイストよ、赦せ
数多の貴女








目を開けると、いつでもそこに在った。

手を伸ばすと、やさしい匂いに抱きしめられる。

夜に浮かんでいる月みたいに、やわらかな光で、そっと僕を包み込む。


僕を見つめて、僕の名を呼ぶ。


触れていたい、と思う。


この温かさに、ずっと触れていたい、と。


でもね、


知ってるかい? 始まりがあるということは、終わりだってあるということを。


なんだか、世の中を見ていると、それを想像できていない、そんな無防備なひとたちが多すぎるよ。

僕には、そう見える。


いつまでも続いて欲しい、そう願うことは、僕にだってあったけれど、願っているかいないかなんて、そんなことは関係なくて。

本当に、突然訪れるんだ。


僕はそれを知っているから。


いつも、そうだったから。


だから、驚かなかった。


彼女との別れだって。
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