新婚の定義──嘘つきな君と僕──
行方不明の真実
別々の部屋で目覚めた翌朝。

ユウが起きてリビングに行くと、レナはもう出掛けた後で、いつものように朝食が用意されていた。

いつも通りの朝なのに、夕べのレナの言葉が、ユウの心をざわつかせる。

前に話してくれた言葉と、夕べのレナの言葉、どちらが本当なのだろう?

ユウはカップにコーヒーを注ぎ、テーブルの上の朝食を眺める。

(どっちがホントのレナ…?)

子供の頃から想い続けたレナは、ユウの前で穏やかに笑い、付き合い始めてからのレナは、いつも優しくレナを包んでくれた。

ユウの過去を知って傷付いても、今のユウがそばにいてくれたらそれでいいと言ってくれたレナが、初めてユウを責めた。


“私が誰とどこで何しても、ユウにはそれを責めることなんてできないでしょ?”


(あんなレナは初めてだった…。)

ユウを信じてるといつも言ってくれたはずなのに、夕べはケイトと一緒にいたんだと思った、とさらりと言った。

(知りたくもない過去を知って傷付くくらいなら、知らないで済む過去は知りたくない…。)

タクミに言われた言葉が脳裏をかすめる。
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