新婚の定義──嘘つきな君と僕──
嘘をついても
レナが自分の部屋へ入ると、ユウはお風呂に入り、湯船に漬かって考えていた。

(何をわかって欲しかったんだろう…?)

ユウの知らない自分の過去をわかって欲しかったのか。

それとも、ずっとユウを騙していたことをわかって欲しかったのか。

(知らないままでいた方が幸せだった…。)

知る必要のない過去なんて、知らない方が幸せに決まっている。

レナがずっと自分だけを想ってくれていたと思っていた方が、幸せだった。

(じゃあなんで今更…?)

レナの言葉の意味がわからず、ユウは頭を抱える。

(オレも、レナに嘘をついた…。)

ケイトとは何もなかったのかとレナに聞かれた時、本当のことは言えなかった。

だけど今になって、なぜレナはそれを聞いたのか?

ユウはハッとして顔を上げる。

(まさか…オレがいないところで、ケイトから本当のことを聞いていたんじゃ…?!)

確か水野が、ケイトの撮影で急病になったカメラマンの代わりをレナが務めたと言っていた。

その時に、ケイト本人の口から、ロンドンにいた頃のユウとケイトの関係を聞かされたのではないか?

もしそうなら、常にユウに寄り添うケイトや、それを強く拒否しないユウの姿を見て、レナが不安になってもおかしくはない。

(レナは…不安な気持ちをわかって欲しかったのか?!)

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